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FANCY
旧校舎の幽霊


「あ……」

やっとのことで第1声。

「ここで何やってんの?」

「君こそ」

「おれは……」

「さっき、歌ってたよね」

彼は恥ずかしそうに、照れたように顔を逸らした。

「黙っててくんないか?」

あの綺麗な歌声を――?

「イヤと言ったら?」

彼の反応を覗う。

「中倉がここで毎日何してるかバラす」

「知ってるの?」

みんなが帰ったことを確かめてから歌ってるのに。

「あぁ。今、中倉が座ってるところに毎日座って聴いてるからな」

聴いている人がいたなんて。
傍にいたなんて。
こんな近くにいたなんて。
ほとんど話したことがなかった彼が。
こんなにも近くにいたなんて。
私は恥ずかしくなって顔を背けた。

「だから、お互い秘密」

――共犯。

彼はそう言いたいのだろう。
ここで、私の好きな曲を歌っていた原因がわかった。

「――いいよ」

私は含み笑いをつくって見せた。

「――中倉」

「なに?」

「毎日、ここ来るよな?」

それは――



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