VIOLENCE LOVE
言われなくとも
ワゴン車が去って行ったあとに、静雄さんを見ると、これまた偶然にもがっちり目があってしまい、気まずい雰囲気が流れる。
そんな中、静雄さんが不意に口を開いた。
「…ゆかり」
「は、はい!?」
いきなり名前を呼ばれて声がうらがってしまう。鬱だ、死のう。
そう思っていると、静雄さんが急に頭を下げてきた。
「ちょ、へ?…え!?し、静雄さん!?どうしたん」
「すまない!急に、その、なんだ、キスしちまって…」
へ?
「俺、臨也の野郎がゆかりにキスしたって聞いて…ついカッとなっちまって、ゆかりの気持ち考えてなかった…」
「いや…その」
「嫌…だったよな」
「…!」
顔をあげて聞いてくる静雄さんの表情は今にも泣きそうな顔で、まるで、私に嫌われることを恐れるような…そんな顔だった。
と、いうか…なんか犬みたいだなぁ…
そこまで考えていると急に笑いがこみ上げてきて、微笑みながら静雄さんの頭をなでてしまった。
「大丈夫ですよ。除菌、殺菌、消毒ありがとうございます」
「………」
そのまま素直にうなだれながら撫でられている静雄さんを可愛いと思いながらも、臨也さんの言葉を思いだす。
『シズちゃんと付き合ってよ』
言われなくとも自分から告るわよ。
そう心の中で呟いた自分が臨也さんに惑わされていたと知ったのはずっとあとのこと。
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