VIOLENCE LOVE
電話
そのまま静雄さんにアパートまで送ってもらい、静雄さんは帰っていった。
仕事の初日にこんなことがあると、実に頭の中が混乱する。
荷物が入ったダンボールに囲まれた部屋の中にそのままドサッと倒れた。
明日、また仕事がある。
…そう思うと嬉しくなった。
明日、また静雄さんに会えるんだ。
…そう思うと胸が苦しくなった。
寝転がったまま、何気なくケータイを開くとありえないほどの着信履歴の多さにビクッとなってしまった。ズラリとならんだ名前のどれもが、
「にーにー…」
うわー…
全然気がつかなかったなぁ…
あの心配性の兄のことだ。きっと私が電話を取らないことを気にしていることだろう。私はすぐさま、兄に電話をかけた。
『もしもし!ゆかりか!?』
「やさしが?
(そうだけど?)」
『やーなままでぬーやってたば!?
(お前今まで何をやってたんだ!?)』
「ぬーってから…わじゃさー
(何って…仕事だよ)」
『は?わじゃ見つかったば?だあが心配で電話したんやしが
(は?仕事見つかったのか?それが心配で電話したんだけど)』
「うん、なんくるないさ。よゆーやさ
(うん、どうってことない。余裕だったよ)」
『いえー、だるば。じゃあ、にーにーはなんぎしたさぁ。一応、アチャーん朝にはうまんかい着くから
ああ、そうなんだ。じゃあ、にーにーは面倒くさいことしたなぁ。一応、明日の朝にはそっちに着くから』
「や?
(は?)」
『じゃあな』
「ちょっ…!」
その意味を理解する前に耳にはよく聞くプープーという機械音がなっていた。
明日の朝にはこっちに着く…?
まさか…
そのまさかが本当になることはゆかりには充分すぎるほとわかりきったことだった。
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