VIOLENCE LOVE
ワゴン車
「色々と聞いてくれて…それにご馳走もしてもらって、ありがとうございました!」
「いやいや、別に気にすんなって」
飲食店を出てからトムさんに深々とお礼を言う。そんな私に「先輩が後輩に奢るのは当たり前だ」とトムさんは笑いながら言った。
「じゃあ気をつけて帰れよ。くれぐれも臨也には近づかないように!」
びしっと指をさしていうトムさんにグッと親指を立てて「わかりました!」と返事をすると、じゃあな。とトムさんはバイバイをして、帰っていった。
自分もすぐに踵を返して、アパートへと歩いた。
が、
「うーん………」
30分程歩いただろうか……あたりは見知らぬ街だった。
「迷った」
そう呟きはするが、まだ池袋からは出ていないだろうと思い、歩きまわる。
交番さえ見つかればいいのだが、一向に見つからないのだ。
「うーん、うーん……」
唸ってみるが何にもならない。
そこで、近くの人に道を尋ねようと思い辺りを見渡すと、数メートル先のワゴン車に人が4人ほど乗っているを発見した。
すぐそこに近づき、すみませーんと声をかける。
「あの…」
「ほら!門田さん!やっぱり俺たちに用があったんすよ!」
「いや〜、君は迷える子羊ちゃんかな?お姉さんと一緒に夢の楽園に行こうじゃまいか!」
「いやいや、そんなわけないっしょ」
「おい、怯えてるじゃねぇか…で、嬢ちゃん、何の用だ」
騒がしい車の中から一人、助手席から顔を出した男の人にちょっと訪ねる。
「ここ、どこですか?」
「何々?本当に迷子?ゆまっち、これフラグたっちゃったよ!?」
「いや、まだっすよ!門田さんという強大な壁を越えなければっ!」
「うるさい二人は気にすんな。…それで、ここは池袋だぞ」
「…良かった」
まだやっぱり池袋なのか。そう思い安心する。
「迷子なら乗せて行こうか?目的地に近い駅の名前は?」
「えと…」
こういう場合は…乗せて貰った方がいいのかな…?
「あー…怪しいもんじゃねえからって言っても嘘くせぇよな」
こんなメンツじゃあな……そうニット帽をかぶった青年が言った。
でも、かと言って一人でうろうろとするのは危険だしなぁ…と青年は続けた。
それには同感だ。こんな都会で一人とか怖すぎる。
「あの、迷惑じゃなければ、よろしくお願いします」
「……わかった。ああ、後ろのうるさいのは気にするな」
「………はい」
ちょっと苦笑いしながらも、少しの間、このワゴン車にお世話になることにした。
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