VIOLENCE LOVE
『話術』
「…は？」
いきなりのあまりな質問にまねけな声で返してしまった。それでも相手はバカにしたようには笑わなかった。ただ、いやらしい笑みを浮かべるだけ…
「いやいや、実はもっとちゃんとした作戦で行きたかったんだけどね…君、何かとシズちゃんと似て勘が良さそうだから」
「どういう意味？」
「…気づいてない？」
ニヤニヤと笑った顔が気持ち悪い。
危険、危険、近寄るな、
そう脳が警告する。
「シズちゃん、君のこと好きだよ？」
「いきなり出てきたやつにそんなこと言われても信用できない」
もちろん、信じるつもりはない。
「君もシズちゃんのことが好きだ」
「何を言ってんの？」
思わず笑い出しそうになる。
コイツは人をバカにしてるんだ。
そう思い、口を開こうとした時に彼は言った。
「じゃあ少なくとも惹かれてはいる。見た目もカッコいいし、何より………似ている」
「……！」
それは思っていた事だ。だが、惹かれているのは、『好き』と言う意味ではなく、『強い』からだ。張り合いたいと思っただけ。そうだ好きではない。
「なぁんだ、やっぱ好きじゃんシズちゃんのこと」
「何が？」
「カッコいいと思うんでしょ？」
「……まぁ」
「それに似ている。その怪力で今まで彼氏できたこと無いんじゃない？」
「！？」
何で……知って……
「情報屋だからだよ。君はその気持ちが恋と気がついてないだけだ」
「…違う。付き合ったことはないけど…恋ならしたことがある」
「恋にも色々あるんだよ？愛し方なんて十人十色さ」
「………」
あれ……？
なんだか……わけがわからなく……
「シズちゃんも君とよくケンカしたりするそうだけど…ほら、シズちゃんは好きな子ほどイジメたくなるから」
「それも情報屋の情報力？」
「そうだよ」
なんだろ…
急に奴の話に信憑性が増したと言うか…
「そして君も好きだ」
「誰を？」
「平和島静雄を」
「………」
そう……なのかな………？
間合いをとったはずなのに、いつの間にか青年は目の前にいて、私の首の傷を眺めていた。
「さっきはごめんね。俺、シズちゃんの親友だからさ…本当にシズちゃんにふさわしいか確かめたかったんだ」
「………」
「俺さ、シズちゃんに幸せになって欲しいんだよ……だから」
「………」
「シズちゃんと付き合ってよ」
「……………わかった」
あれ？何で返事しちゃってんの？
私って静雄さんのこと………
洗脳、話術、催眠術、誘導
それらの言葉が浮かんだのは、もっとずっとあとだった。
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