VIOLENCE LOVE
『情報屋』
またもや静雄さんと二人で歩く。
私はまた、あの質問をする。
「静雄さんは何者なんですか?」
「…いったい何回目だよ?ったく、前に答えただろ?」
「でも…」
「慣れれば気にならなくなるから………」
静雄さんは面倒くさそうにそこまで言って、いきなりハッと動きを止めた。それから鼻をしきりに動かす。
「いる………」
「何がですか?」
しかめっ面にみるみるうちに青筋が入り、ピキピキと関節が悲鳴を上げる。
すると、次は前方に向かって駆け出していった。まさに全力疾走。もはや姿も見えない。
「ちょ……」
声すらかけられなかった。
「何だば」
(何よ)
虚しく声は空中に浮かぶだけだった。
ちょうどそのとき、
「いやぁ…やっぱシズちゃんは凄いなぁ……匂いでわかるなんて」
後ろから美声が聞こえた。振り向くと、僅か5センチ程先にアシメの青年が立っていた。
「……っ!?」
「やぁやぁ、シズちゃんのガールフレンドさん」
シズちゃんとは静雄のことを差しているのだろうか……?
そんなのんきな事を考えていると、相手の手がシュッと風邪を切った。とっさに身を引くと、首の右側に何か違和感。
切れていた。スッと5センチほどの一筋の線と重力に従い落ちる血。
そして、男の手にはナイフ。
一瞬驚いたが、次には理解した。
私はこの男に切られたのだ…
「いきなり何よっ!?」
首を抑えながら間合いを取り、青年をギリギリと睨みつける。
「いや、ただのお手並み拝見さ」
「……?」
「運動神経はいいらしいね、ゆかりちゃん」
「何で名前っ!?」
私の名前を知っている事にビックリすると、男はケラケラと笑った。
「それは俺が情報屋だからさ」
「情報屋?」
「そう。情報を売る人」
「………」
「さて、今日来たのは君にお話をするためだ」
お話…?
怪しさ100%だ。
いきなりナイフで人の首を切っておいて……そんな……
「君さ、シズちゃんと付き合ってよ」
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