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VIOLENCE LOVE
『背に腹はかえられぬ』



「邪魔するぞ!!」
「ひぃっ!!」
「ほら、あんちゃん。出すもんだせや」
「その、こ、今月は給料がたりなくて…」
「ああん!?ナメたこと言ってんじゃねえぞ!!」
「す、すみません!!」
「とりあえず、全財産だせや!コラ!」
「全財産!?それじゃあ、生活できません…!私には妻と娘が…!」
「うっせえ!金が払えねえらテレクラなんかやんじゃねぇよ!!」



というふうに私の頭の中でドラマのワンシーンが浮かぶ。
『テレクラの取り立て』って…
じゃあなんで静雄さんはバーテン服なんか……

「あー…ゆかりちゃん?今ならまだ間に合うから、嫌だったら仕事断ってもいいんだぞ」
「…あ、いえ…その」

トムさんの言葉に少し揺らぐ。

「これは…その…暴力団とかヤクザ関係じゃ…」
「んーや、俺たちは一応ちゃんとした会社があるから…テレクラだけじゃなく…そういうビデオの延長料金の取り立てとかやってんのよ。…でも嫌なら、今はまだ間に合うから、どする?」

トムさんが本当に申し訳なさそうに言うからこっちも何だか申し訳ない。
一番反省すべきはずの奴は寿司をもふもふと噛みしめ「お、これうめぇ」などほざいてやがる。

まあ、『テレクラの取り立て』と言うと響きは悪いが、

…背に腹はかえられぬ、か。

「大丈夫です。仕事、やらせてください」
「本当にいいのか?」
「ええ、もうあとがないですから」

トムさんが驚いたような顔をするがすぐににっこりと笑い、頭を撫でる。

「それなら良かった。一応、ヴァローナっていう女の子もいるから安心しな」
「ヴァローナ?外人ですか?」
「まあな、べっぴんさんだ」

トムさんはそう言って立ち上がった。

「今は休暇を取っているから戻ってきたら仲良くしてやってくれ」
「わかりました」

新しく聞く名前の女性に期待を膨らませながら、お寿司を食べる。
その間に、トムさんは静雄さんを連れて「ちょっと静雄かりるわ」と言って店の外へ出た。

「あ、おいしい」

怪しい店だと思っていたが、味の方は絶品だ。

「オー!色黒ガール、オカワリあるヨ?食べル?」
「お金、ないんで」
「お金はツケルよ、シュッセバライでお腹イッパイ夢イッパイね」

苦笑いでその場をごまかす。
…実はこの大型の黒人がちょっと苦手だったりする。

トムさーん、早く帰ってきてー!

その心の叫びは誰にも届かなかった。





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あきゅろす。
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