VIOLENCE LOVE
『街中で喧嘩の華を』
「いやー、本当に凄いよセルティさん」
「お前、あとで本当に殴らせろ」
公園で出会った黒バイクとセルティは「仕事があるから…」と早々に行ってしまった。
今、私は静雄さんと待ち合わせ場所に向かっている。
「静雄さんはセルティさんと仲いいんですか?」
「まあな。アイツはいい奴だからお前でも仲良くなれるだろ」
「へぇ…」
何だか楽しそうに笑う静雄さんがまた人間らしく見えた。
人間に見える…認めたくはないが、そういう時は見惚れてしまう。
低い沸点に達すると気性が荒くなる…それさえ除けば凄くいい男だろうに…
「どうした?」
「見惚れて―…」
「あ?」
「あ、い、いえ!あ!そ、そういえば」
つい口にしてしまった言葉を飲み込むように、慌てて言葉を紡ぐ。
「羽島幽平のお兄さんってどんな人なんでしょうかね?」
「…さあな。昨日言ってたみたいにカッコいいかもな」
「それなんですが…もしかしたら実は静雄さんみたいな狂暴な人だったりして。だとしたら羽島幽平はとても苦労してますよねー。静雄さんみたいな人がお兄ちゃんとか私には信じられ―…」
そう笑いながら言った瞬間、隣でメキッ、ボコンッと不可解な音がした。
「お前、本当に殺す」
そこには標識を引っこ抜いて私を睨みつける静雄さんがいた。
「ちょ!えぇ!ここ街中ですよ!?」
「知るかぁ!」
「どの単語が沸点を通りこしたんですか!?あ、狂暴とか!?」
「俺のせいで幽が苦労してるとか!全部だ!」
そう言いながら標識を振り回す。
辺りの人達は慣れたように遠ざかり、私達の周りだけぽっかりと穴が開いたように人がいなくなった。
「『かすか』ってだれですか!?」
「うるせぇ!」
標識をよけながら対抗するが、静雄の攻撃は止まらない。
「遅刻しますよ!静雄さ―…っ!!」
ガコンッ!
頭に標識の先の部分が直撃した。
周りが息を呑む音が聞こえた。
それと同時にカメラのシャッター音が瞬く間に広がった。
…週刊誌の取材者たちかな…
そう思いながらゆっくりと体制を立て直し、静雄を睨んだ。
「…たっくるす」
(…ぶっ殺す)
「こっちのセリフだ。ゆかりちゃんよぉ!」
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