VIOLENCE LOVE 『黒バイク』 「いつも通りの私服で…」 9:00に公園につく。 あたりをキョロキョロと見渡すと、静雄を見つけた。 …黒バイク付きで 「お、ゆかり!ちょうどセルティにお前さんのことを話してたんだ」 「…セルティ?…静雄さんこちらの方は…?」 オドオドと聞いてしまう。 …もしかしたら、もしかするかも… 『セルティ・ストゥルルソン。運び屋だ』 黒の人がPDAをこちらに向けた。無機質な文字が自己紹介をしている。 「静雄さん、この方…あの有名な?」 「ああ、黒バイクだ」 『首なしライダーとも呼ばれてるな』 会話に問題ないほどの速さでPDAに打ち込み、流れる作業でそのPDAを二人に見せるライダーがあの都市伝説の『首なしライダー』とは…… 確かに、異様な存在感はある。 「本当に首なし…何ですか?」 『見るか?』 「いいんですか?」 半ば好奇心、半ばおっかなびっくりで唾を飲む。 セルティがヘルメットをはずすと… なかった。 「…あきさみよー…」 (…驚いた…) この単語をこんなに静かに言ったのははじめてた。 しかし、無意識に次の瞬間には、そのあるはずの空間に思いっきり拳を突き出していた。 じつに思いっきり。 拳が風を切る音が聞こえるくらい。 「ゆかり!ちょ、おま!?」 『…!!?』 静雄とセルティが驚いてこっちを向いた。 「本当にないんだね!インチキじゃないんだ!凄い凄い!」 「てめぇ!セルティに首があったらセルティ死んでただろ!」 『お、落ち着け!静雄!私はちゃ、ちゃんと生きているから』 静雄は怒って青筋を浮かべている。 セルティもびっくりしたからか、PDAに打ち出された最初の文字が続いていた。 「よし、一発殴らせろ!セルティの代わりに殴らせろ!」 『静雄!だから落ち着け!彼女に悪気はないんだから!………ない、よね…?』 怒る静雄と焦るセルティを目の前に私は目を輝かせた。 「凄いよ!凄い!」 私はそれしか繰り返せなかった。 この思いを伝えられるだけの単語力が私にはなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |