VIOLENCE LOVE
『私服?』
いつもより早く起きて化粧をする。バーで働くということは暗い所に合うようなメイクをしなくてはいけないから面倒くさい。
それにしてもバーなのに朝出勤とは驚いた。
きっと最初は掃除とかさせられるんだろうなぁ……
そう思いながら下地を作っていく。
「服って…Yシャツかな?」
考えていなかった…
バーテン服はまだ持っていないから………私服かな?向こうで着替えるの?
あれ?でも静雄さんって…なんか見る度に仕事服のような…まあ、いいか。
静雄さんに聞けばわかるよね。
おもむろにケータイを取り出すと、昨日の夜アドレスを貰った相手に電話をかける。
プルルルル、プルルルル、プルル―…
まだ寝てるのかなぁ…
長く続く聞き慣れた音に眉をひそめる。
…それはすぐに耳に届いた声で消された。
『…うぁい、もしもし』
電話を取った声は呂律が廻っていない静雄の声だった。
「あ、静雄さんおはようございます。すみません寝てましたか?」
『んー…おう、おはよう。ゆかりか…何だ?』
「あの、服装はどうしたら」
『あ?あー…いつも通りだよ』
「私服でいいんですか?」
『俺とかトムさんとか見たらわかるだろ』
いや、トムさんは昨日見た限りスーツっぽいし…
第一、静雄さん…あんたはバーテン服じゃん!
「……あ、ありがとうございます。それじゃまたあとで」
『あ、ちょっとまて』
「はい?」
電話を切ろうとした私を静雄が止める。
「なんですか?」
『迎えにいってやるよ』
「え!?」
電話越しに静雄の起き上がる音が聞こえる。それからゴソゴソと準備をしているようだ。
『お前、待ち合わせ場所にちゃんと来れるのか?』
「え…と、それは…」
実をいうと…まだ待ち合わせ場所の位置があやふやで一人でたどり着けるのは心配だった。
『じゃあ、昨日の公園に9:00にな』
「…はい、わかりました」
『じゃあな』
…まあ、これで迷子にはならないだろう………
てか、本当に私服でいいのかなぁ…
んー…ちょっとおとなしめのクールっぽくするか…
9:00まで、あと一時間…
黒バイクに会うまで、あと…
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