オリジナルSS
雨上がりの空の下で(H27.7)
図書館からの帰り道。急に雨が降り出した。
僕は、近くにあった花屋の店先に駆け込んで一息つく。
髪から滴ってきた雫を左手の人差し指で弾くと外に恨めしげな目を向ける。
「お姉さんの嘘つき…… 鞄に本も入ってるのにな」
朝テレビの天気予報で見たお天気お姉さんのにこやかな顔と、「梅雨の合間の晴れになるでしょう」という声を思い出して呟く 。
そうしていると、店の中から突然声をかけられた。
「いらっしゃいませ!」
僕は、びっくりしながら後ろを振り向く。
そこには、この店の店員なのだろう…… 大学生くらいのお姉さんがいて、にこにこ笑いかけて くる。
「あっ すいません! お客じゃないんですけど…… 」
と僕が、頭を少し下げて言うとそのお姉さんは外に目線を移して聞いてくる。
「雨宿り? 朝の天気予報では、晴れの予報だったのにね」
僕が、はははと苦笑いするとお姉さんが言ってくる 。
「良かったら、奥で雨宿りしていいよ? 先客がいるけどねー」
といってくれたので、僕は感謝しながらその好意を受ける事にしてお姉さんについていく。
案内してもらったのは、大きな窓がある部屋。 白いテーブルといくつかの椅子。そのうちのひとつに僕と同じ歳くらいの女の子が座っていた。
僕とお姉さんが入ってきたのにも気付かずに、一生懸命というのがしっくりくる真剣さで読書をしている 。
僕は、お姉さんと顔をあわせて微笑み合ってからその女の子の前の椅子に座る。
お姉さんは、手を振ってから店の方へ戻っていった。
そして、ぼくも鞄から本を出して読書を始めた。
どれくらい、立った時だろう。
いきなり目の前に座っている女の子が声をあげた。
「わっ いつの間にか男の子がいます」
僕は、本から顔をあげてその女の子に話しかける。
「凄い集中して本読むんだね」
その女の子は、頬を染めながら胸を張って答える。
「読書楽しいですもんっ」
ほんとに、好きなんだろうなと思いながらその女の子を見ているとその娘が今度は質問してきた。
「なにを読んでいるんですかぁ?」
僕は、読んでいた本の表紙をその娘に向ける。 すると、その娘も自分が読んでた本の表紙をこっちに 向けながら嬉しそうに言ってくる。
「なんと、おんなじ本です! 偶然ですね! なんだ か嬉しいですよぉ」
その娘も、僕と同じ本を読んでたのに驚いた。 そして、僕もなんだか嬉しくなってその娘と好きな本の話をし始めだ。
そうして、話をしていると部屋の窓から柔らかい日光が差し込んで来て二人で外を見る。
「雨上がったね……」
「そうですね」
お店のお姉さんにお礼をいって、二人で揃って雨上がりの外にでる。
僕は、空を見上げながら
「雨後の晴色またたのしけりかな」
そうつぶやくと、隣を歩いている娘が反応する。
「おー 渋いですね 芭蕉ですか……」
そうして、二人で揃って雨上がりの空の下を歩いているとその娘がいきなり僕の手を握って口を開く。
「あのですね…… よかったら……」
気が付くと空には虹がかかっていた。
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