おもいびと
◆恋慕5
今夜だけは、おれは陸を帰せなかった。
心配してくれている柊司さんに悪いと思ったけれど、陸をこんな状態でこのまま帰したくない。
もっと、安心させてやりたくて。
おれ自身も安心が欲しくて。
確かめたくて。
おれは、自分が寝起きしている客間に陸を連れて入った。
客間として使っているそこはクローゼット付きの洋室で、シンプルな毛足の長いセンターラグが敷かれているほかには、壁際に淡いブラウンの木枠に囲まれたデイベッドが置いてある。
そこに招き入れると、陸は緊張して身体を硬くした。
あんなにサカって強引に迫って来たくせに、やっぱりまだ子供なんだなと思えてかえって安心する。
おれは、陸が手にしていた制服と荷物をクローゼットに収容して。
突っ立ったまま緊張している陸にパジャマを着せてから、手を引いてベッドに誘って抱きしめた。
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