おもいびと ◇渇望3 海斗が部屋に入ってきた。 おれが中学に入ってからは、互いの部屋を行き来する事もなくて。 背の高い影が、ここでは見慣れなくて戸惑う。 でも、おかしい。 中学に入ってからのおれは、海斗を部屋に入れてない。 それならどうして、おれの下着の事なんて知っているんだろう。 「──陸」 海斗がおれの頭に手を乗せて、優しく撫でた。 ゆっくりと髪を撫でてから、目線を合わせるように床に膝をつく。 「何かあったのか?」 そっとおれの顔を仰ぎ見る、優しい海斗。 どんなに姿が変わったとしても、海斗の優しさは変わっていない。 「──海……斗」 おれは自分でもどうしていいか分からなくて、こらえきれずに泣き出してしまった。 変に思われる 軽蔑される それだけを恐れていたのに。 海斗が優しくて、気持ちが緩んだ。 海斗が好き 海斗が欲しい 海斗に抱かれていないと、おれは幸せを掴めない 泣きながら葛藤しているおれを。 海斗は優しく抱き締めてくれた。 そんな海斗にでさえ おれは 浅ましく欲情した [*前へ][次へ#] [戻る] |