おもいびと
◆原罪12
陸は随分と努力し続けている。
おれと一緒に居たいという理由だけで、そこまで頑張れるのか……と。
くすぐったくて、それでいて不思議に思えた。
「──医者にでもなるのか?」
一度冗談半分に訊いてみると、陸は少しだけ動揺して顔を赤くした。
当たってしまったらしい。
あの、純真無垢な陸が、随分と強烈な進路を選んだものだと思えて可笑しかった。
医療現場の修羅場なんて、周りの医療者から話を聞いて知っているはずなのに。あえてそこに行くのか……と、抗えない遺伝子の力を感じる。
「海斗と……一緒にいたいから」
陸ははにかんで応えた。
嬉しくて、愛しくて、心臓が潰れるかと思った。
無理を通してでもおれと共に歩こうと努力する陸の姿に。おれはまた背中を押された。
愛情の形がどうあれ、おれたちには深い絆がある。
おれの疑問を晴らす答えの潜む場所が。
今はどこにあるかは分からない。
ただ
願わくは
努力して、共に歩んでいこうとするおれたちを
どうか
いたずらに引き裂くことはしないで欲しい
おれは、ひたすら
それだけを祈り続けた。
原罪
――終――
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