おもいびと
◆渇望10
「独りで……変な事考えて……」
やっと陸が話し始めた。
でも。
それは言わせてはならない。
責任は、おれにある。
「──海斗に、いっしょに……」
おれは。
次の瞬間。
反射的にキスで唇を塞いでいた。
全てを言わせてはいけない
重荷を負わせてはいけない
自分が、陸を守らなければ
そう思った。
なのに。
込み上げてくる衝動には勝てなくて。
ずっと押さえつけてきた願いが、狂暴な力を持って表面に出てきてしまう。
愛しくて。
守りたい。
抱きたくて。
我慢できなくて。
あのとき。
辛うじて自分の欲望を抑えながら導いた。
おれが悪い。
全てはおれが。
おれのせいで、陸を狂わせた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!