おもいびと ◇蓮の棘6 あれからおれは変わった。 海斗と引き離されても、想うことは海斗の事ばかりで。 でも、そんなおれの内面なんて知られてはいけないような気がして。 おれは変わらずに努めて、勉強も部活も手を抜かなかった。 海斗が頑張っているから。 おれも頑張らなきゃな……って思った。 そんな風に優等生でいると、未然に干渉を防いで自由でいられる事に気づく。 おれは、帰宅が遅くなっても咎められないくらいには、親からの信頼を取り戻していた。 時間があればゲイサイトを渡り歩いた。 とにかく情報が欲しかった。 漠然とした妄想に近い欲望は、情報によって現実味を帯びておれに迫る。 おれは、海斗の全てが欲しい。 海斗に愛して欲しい。 記憶に刻んで、決して忘れないように。 おれを抱いて欲しい。 おれは。 不埒な身体を持て余した、ただの欲の塊だ。 初めてその世界に触れた時のショックはどこに消えたのか。 今では自然に受け止めて、ただ、期待だけが育っている。 こうやって、泣きながら海斗の前に立っていてさえ。 抱いて欲しいと願うおれは。 もう、海斗以外の誰とも、セックスなんて出来ないと思った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |