おもいびと ◆懺悔7 「おれも……」 どうして口をついて出てしまったのか分からない。 ただ。 母に言われた事が、真実ではないと主張したかったのかもしれない。 「──陸が………可愛い」 言葉にしてしまえば、感情があふれてきて仕方がない。 そんなつもりはなかった。 なかったのに。 涙があふれてきて止められなかった。 「海斗……」 彼は、おれの孤独に寄り添うように、おれの肩を抱き寄せて慰めをくれた。 頭を優しく撫でて。 名前を呼んでくれる。 もし。 おれが彼を愛したなら。 彼に愛されたなら。 今よりは苦しい思いをしなくても済んだのだろうか。 そんな現実味のない事を考えながら、おれは彼の体温を感じて。 心の箍が緩んで。 感情があふれ出している事に気付いて。 それでも。 心地いいぬくもりのあるこの場所から 離れる事が出来なかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |