おもいびと ◆懺悔6 「勉強は?ちゃんと身になってる?」 室内着に着替えてやって来た彼はおれの隣に腰掛けた。 テーブルに置いていたボトルを手にして、喉に流し込む。 「まあまあ……。ここは静かでいい」 問題集を閉じておれは彼に向き直った。 きれいなひとだ。 だけどやっぱり彼は男で。 おれの心は動かない。 おれは陸にしか反応しない。 同性愛者である彼の傍にいても、そんな事を再認識するだけだった。 「なに?」 彼はおれの視線を訝しんだ。 「きれいだ」 感じたままを答えると彼は笑った。 「おれが?」 「うん」 「それは主観的な意見か?」 「──どちらかといえば……客観的かな」 「安心したよ……。そんな末期な事を言うのは百瀬くんだけで充分だ」 「そんなこと言うんだ?」 からかうおれの態度に気付いて、彼はわざとおれを見下すように返してきた。 「言うさ……。恋人なんだから」 「柊司さん可愛い……とか?」 おれが指摘すると、不意を突かれた彼は、カァッ……と顔を赤く染めた。 言われるんだ………… おれはなんとなく……。 いや。 本当に可愛いかもしれないと思わされた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |