おもいびと ◆イノセント1 中学に入って。 おれはバスケがしたくて部活を始めた。 小学校の頃から比べると、帰宅時間は遅くなる。 独りで家にいるのが寂しいと言って、弟はおれの帰宅時間に合わせるように音楽教室に通い始めて、音楽に没頭し始めた。 弟が六年生の秋。 おれは中二でバスケもそこそこ上手くなって。 勉強も部活も、学校生活はそれなりに充実した毎日を送っていた。 夕暮れ時。 おれが部活を終えて学校から帰ると。 家のアプローチを走り抜けて飛び出して来たガキと歩道ですれ違った。 明らかに人ん家から出てきたくせに、挨拶ひとつなく去っていったガキを不愉快な気分で見送って。 おれは鍵が開きっぱなしのドアに気付いて、不審を覚えて家に入った。 居間には誰も居なくて。 いつもなら弟が、居間のテレビでFFにハマっているはずなのに。 その日は家中が暗いままだった。 玄関には靴があったし、ガキが出て来たんだから、弟は家にいるはずだ。 おれは心配になって、すぐに二階に上がって、弟の部屋を訪れた。 [次へ#] [戻る] |