おもいびと ◆原罪5 おれは おれたちは 何をしてるんだろう おれの方がされるなんて、考えた事もなかった。 おれに導かれなければ、自分にすら触れられなかった陸が。 興奮しながら、おれを抱いて導こうとしている。 それは、ひどく罪悪感を伴って。 おれを快楽で打ち拉いだ。 自分の欲を認めたくないが故に、自身に触れられないと言っていた癖に。 おれの欲にはためらいなく触れてきて。 熱いおれ自身と同じくらい熱を持った指が、おれを搦め捕って追い詰める。 上下する指が滑りを帯びて、刺激をさらに強く容易くする。 そんな変化で、浅ましい自分の反応を知らされた。 「──り……く」 どうしても堪えることが出来ない乱れた吐息が、喉奥を抜けて洩れ出てしまう。 不埒な快楽に酔う兄の姿を、コイツはどう思っているのだろう。 「──海斗、好き」 耳許で囁かれて。 肩を押さえ込まれて。 机の上に腰を落とした。 そんなおれの前に、陸は膝をついて。 おそらく、初めて目にしたであろうおれの欲に濡れた象徴を、陸は陶然と見つめてから、その付け根に唇を寄せようとした。 「ダメだ!陸……」 おれはあわてて抵抗して、陸を抑えた。 「──放して」 妙に落ち着いた声が返ってきて、おれは陸の本気を知った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |