おもいびと
◇僕らのキセキ5
大きくなってから、風呂は兄弟で入らされた。
小学六年と四年の男子は、母親と風呂には入れなくなった。
父親の勤務は不規則で、家にいるときは三人で入ったけど、ほとんどはおれたち兄弟ふたりで。
子供ふたりで入っても、海斗となら親と入っている時と変わらなかった。
遊ぶことはほとんどなくて、洗って浸かって温まって上がる。
そんな海斗だから、親は信頼して幼い海斗に留守を任せた。
親はふたりとも不規則勤務で。
食事の用意をして出掛けた母の代わりに、海斗が皿の料理を温めて食卓を飾ってくれた。
ふたりで作る食卓が当たり前で、いつの間にか自分たちの食事の時間は自分たちで決めて。
帰宅が遅い両親が帰る頃には風呂も済ませて、一緒に眠っている事の方が多かった。
海斗は男子にしては几帳面なタイプで、清潔なイメージがいつも崩れない。
ガキ大将とは違ったリーダータイプで。
物静かだけど不思議と存在感のある、子供の中にあっては、恐ろしく知的な怖い存在だったらしい。
傍にいたおれには分からなかったけど、おれが上級生から一切いじめられなかったのは海斗の影響力なのか……と、後になって察した。
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