おもいびと ◆渇望8 おれの前で、陸が小さくなって震えている。 可哀想だと感じていながら、疑問を抱く思いが理由を問い詰めた。 繰り返す失敗は不自然すぎて、本当は『四回』なんてもんじゃなかった。 深夜に、陸の部屋を訪れる度に、それは必ず隠されていた。 教えたのはおれ。 その後も導いた。 陸が中学に入ってからは、おれは帰宅が遅かったし。 陸はもう、ひとりでできる年でもあったから、これ以上干渉してはまずいと感じて、ふたりでの風呂は絶ち消えた。 この異変に気付いたのはおれが高校に入って、深夜の寝室への侵入をしてからで。 おれの方は一応生活が落ち着いていたけれど、陸は落ち着いていなかった訳だ。 問い詰められた陸の、罪悪感と羞恥。 感情が手に取るように分かる表情。 それは、おれの胸が潰れるんじゃないかと思う程の痛みを伝えてきた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |