おもいびと ◇僕らのキセキ3 海斗はヒーローだった。 近所の子供集団のリーダーで、運動能力は抜群で頭も良かった。 就学前の幼児集団の中に在って、ちゃんとルールとペナルティーを築き上げていた。 集団の母体が幼児だけに、大人からしてみれば大した事じゃないんだろうけど。 悪気がなくても、友達を傷付けたら謝る。 約束は守る。 上限を守る。 公共性を重視したルールは、不文律として仲間の中に浸透した。 だから、みんな仲が良かった。 散歩中の犬が公園に乱入してきた事件があって。 その時はみんな遊具の上に逃げたけど、おれはチビだったから身動きすら出来なくて。 怖い顔をした大きな犬を前にして震えるだけのおれを、一端逃げたはずの海斗が戻ってきて、おれをさらうように抱き締めてくれた。 ギュッと力一杯抱き締められて、自分だって怖い癖に、必死におれの盾になって守ってくれて。 海斗はフレンドリーな犬に遠慮なく舐められて、ベロベロになっていた。 後になって、あのときの犬はハスキー犬だったと聞かされて、小学校に入ってからその犬を見る機会があって。 やっぱり怖い顔だったと確定した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |