おもいびと ◇穢れなきもの3 春になって中学に入学して。 おれは憧れの海斗と同じブレザーを着た。 そこには小学校とは比べ物にならない世界があって。 大人でも子供でもない中途半端な成長過程の集まりで。 海斗は、いつも女子に周りを囲まれて。 部活中でも体育館には女子が群がっていて。 おれの想像を遥かに超えた、スーパースターみたいな存在だった。 おれだけの海斗だと思っていた。 小学校までは確かにそうだった。 なのに。 急に胸が膨らんで、腰が張り出してきた女子たちが。 海斗に触れて。 媚びて。 優しさをねだって。 自分だけを見てほしいと欲を見せる様は、あまりにも醜悪で。 おれは、彼女たちの姿が自分自身と重なって見えて。 自分がひどく汚いものに思えて、自己嫌悪に陥った。 中学に入ってからは。 一緒に風呂に入れなくなった。 おれが。 浅ましい自分に気付いて。 恥ずかしいという感情を覚えたからだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |