おもいびと
◇WAY OF LIFE17
荒い振動が消えた瞬間、少しだけ重力を感じて離陸したことを知った。
窓の外では、空港をとりまく町が小さくなってゆく。
自分たちが育った街は遠すぎて見えない。
地図で見た形の陸と海の境界線が後ろに過ぎ去って。
おれは、初めてひとりで故郷を離れたのだと感傷的になる。
時計台の澄んだ鐘の音が、青い空に吸い込まれてゆく。
鳩の群れの羽音が一斉に高く舞い上がる。
そんな光景を思い出した。
淡い紫色の街路樹の花。
北国の美しい街。
必ず帰って来よう。
きっと。
海斗が待っているから。
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