おもいびと
◇ＷＡＹ ＯＦ ＬＩＦＥ14
「おまえも……男なんだよな。そんな事も忘れていた」
深い。
深い闇のような黒い瞳。
その瞳が情けなく歪むおれの顔を映し出した。
なのに、先輩は変わらない笑顔をおれにくれる。
「……可愛いから」
カズ先輩。
可愛いって言ってくれた。
まだ、おれのこと可愛いって思ってくれるの？
「そいつのこと……まだ好きなのか？」
先輩はおれの感情を推し量る。
「その……遠くに行ってしまったヤツ」
海斗のこと？
おれは、突然熱くなって気持ちが高まった。
「うん、好き。大好き」
すぐに答えた声が自分でも分かるくらい弾んでる。
先輩は苦笑いで、ガシガシとおれの頭を撫でてくれた。
「ごちそーさん」
変わらないあたたかさが嬉しい。
愛してるひとの傍にいる事ができなくて。そのままずっと独りで置かれたとき。
おれは、本当はいらない人間なんじゃないか……って考えが頭を掠めて。
足元が揺らいで。
不安で。
怖くて。
辛かった。
そんな時に、先輩はおれを抱きしめてくれた。
たくさん優しくしてくれた。
先輩が大切にしてくれたから、おれは救われたんだ。
先輩がくれた優しさが、辛い気持ちに耐える力をくれた。
先輩が傍にいてくれて良かった。
勝手な、一方的な気持ちだけど。
心から感謝してます。
ありがとう。
ありがとうカズ先輩。
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