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おもいびと
◇時つ風16





おれは汚い。

無責任で、曖昧な態度で、先輩の思いも、ましてや自分の思いも分からないまま抱かれている。

本当に人を愛するという事ってなんだろうな。

こんな関係じゃない事だけは確かだ。



おれを撫でる手が気持ちよくて。
全身にキスをもらって。

こんな風に触れられたらたまらない。



優しくて、焦れったくて。

ただやりたいだけだなんて思えなくなる。



まるで、大切な人を愛しているような、そんな在り方がおれを混乱させた。



突き上げられるたびに興奮して。

抜かれるたびに気持ちよくて。

欲しがる身体が止められない。



先輩はノンケだったはずなのに、どうしてこんなにおれを追い詰める事が出来るんだろう。

訳が分からないうちに達かされて、吐き出して。
疼きが止まらないおれは、色悪な身体だって言われた。

ベッドに座る先輩の上にまたがって。抱きついて。
ずっと痺れたように焦れったく疼き続ける下半身に全てを乗っ取られて、何にも考えられなくなって。

頭の中が真っ白になっている間は、気持ち良くて、全てから解放されて、幸せだけに包まれた。

「陸……気持ちいいか?」

優しい先輩は変わらない。
今は、熱い快楽をくれる。
麻薬みたいにおれを酔わせて、何もかも暴かれる。

「……いい。いいよ……せんぱ……ぁ。んぅ……カズせん……ぱ……」

せり上がってくる快感に急き立てられて、おれは言葉も失って、先輩にギュッと縋りついた。

初めて抱かれたばかりで、もう気持ちいい事にこんなに身体が反応して。
おれは……。

「陸……陸……。可愛い。おまえ……」



可愛いって言った?
こんなおれに?

信じられない



「……く…そ。気持ちいい」

先輩の声が、触れ合う頬を伝わって、直接体に響いてくる。

「────陸」

囁きのような先輩の声が、なぜか泣いているように聞こえた。


まるで、おれの気持ちがうつってしまったみたいに。



切なくて哀しい声だった。



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