おもいびと ◇時つ風7 週末、雪まつりのイベントライブで飛び入りで演奏させてもらって。 興奮して。 朝まで騒いで。 その勢いは止められなくなっていた。 少しだけアルコールの入ったカクテル。 甘い味にいい気になって、喉を潤すために何杯か飲み干した。 ライブが終わった後はそのまま打ち上げに参加して。ジャズの本場アメリカのゴキゲンなプレイヤーたちは、感じるままの即興を聴かせてくれてもう大興奮! 身体で聴く音に自然に乗って、おれも軽音部の先輩たちも、陶酔するように演奏し続けて、ライブハウスのスタッフの人たちは、そんなおれたちのクレイジーぶりを口笛で囃し立てた。 先輩のベースは身体の奥深くまで響いて心地よいリズムで掻き回す。 上手いひとと演るのは最高に気持ちいい。 手がつけられないほど興奮して、おれは先輩との掛け合いで楽しんで、楽器を離してからもいいだけ騒いだ。 セッションしたバンドのジャズメンたちはニューヨーカーだからなのか何なのか。 ゲイ率が高くてノンケの先輩を煽って。 ふたりきりになった時には、おれたちはすっかり変なムードに呑まれていた。 ジャズメンたちが、どうして持っているのか理解に苦しむグッズの入った小さなポーチを、先輩に押し付けていたのをおれは見逃さなかった。 断りきれなかった先輩は、それを慌ててギターケースに隠すようにしまい込んだ。 先輩は、一体どんな気持ちでそれを受け取ったんだろう。 そんなにお膳立てされちゃ、ちょっとくらいは悪戯心が動かされたっておかしくない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |