おもいびと ◆恋慕9 「海斗……海斗!」 「陸?」 熱に喘いで縋るような顔を見せて、おれを仰ぎ見て唇を開く。赤い果実のような濡れた舌が向けられて、ゾクリと背筋が冷たい快楽に支配された。 「海斗……」 誘う舌に引き寄せられて、唇を寄せる。 微かに触れるだけで、吐息が交じり合い、熱い欲が込み上げて。 けれど、触れ合うのは互いに握る手だけで……と、初めに約束をしていた。 自分でする事と触らない事が条件で、キスは想定外だった。 ヤバい! そう思った途端に、キスしたくなってきてたまらない 「……お願い、海斗」 唇に触れる熱い吐息に自制心を奪われる。 誘う視線と表情が、おれの欲を掻き回して。 混乱して、動揺して。 肋んなかで心臓が跳ねて、泣きたくなるような焦れったい衝動に、理性は根こそぎ毟られてゆく。 「海斗!!」 切ない喘ぎを向けられて、おれは抵抗も虚しく、あっけなく陥落した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |