おもいびと ◆恋慕2 「どうして?」 陸の泣き顔がおれを責める。 「海斗はもう、おれなんてどうでもよくなったの?」 「そんな事あるわけないだろう!」 「ならどうしてっっ!?……どうして抱いてくれないのっっ!?」 おれは、陸の胸から身体を起こして、その可愛らしい泣き顔を見つめた。 おれを責める陸に、おれは何も返せない。 「ほかに好きな人でも出来た?……おれなんかより……ずっと、柊ちゃんの方が魅力的だしね」 「なに……言って……?」 自嘲するように拗ねる陸は、何か誤解している。 陸の上に乗ったまま、陸の可愛さに、アホ面下げて見とれてる場合じゃねえ……って事におれは気付いた。 「おれはおまえだけだろ!?」 そんなふうに返すことしか出来ないおれを押しのけて、陸は身体を起こしておれに迫った。 「なら、どうして!?どうしておれから離れて、おれを独りにしたの!?こんなに近くにいるのに、どうして抱いてくれないんだよ!!」 「独りにしたわけじゃ……」 「おれを連れて、駆け落ちでも何でもすればいいじゃん!なんで独りでいなくなったりしたんだよ!?おれはそんなにお荷物だったの!?」 「違う!!」 「じゃあなんなんだよ!?」 陸に問い詰められておれは、思わず白状させられてしまった。 「おれは見返したいんだ!!」 陸はいぶかしげにおれを見た。 意味分かんない……ってカオだ。 「やりたいんじゃない。愛してんだよ!………一生愛してる。ずっと愛していた。ずっとおれが守ってきた。今さら他の奴に渡せるかっっ!」 もう、おれの方が止まらない。 衝動を止められなくて、陸を抱きすくめる。 「――この感情が、興味本位だとか間違いだなんて……そんな半端なものなんかじゃない!……って、見せつけてやりてぇ!!」 切なくて。 悔しくて。 乱れた感情が垂れ流しで。 みっともないくらいに、おれの感情はグチャグチャに引っ掻き回されていた。 「一時の感情なんかじゃない!!」 それでも、それがおれの本当の姿なんだから仕方ない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |