爆音オルガスムス 3 夏になって、海外から母さんの弟が帰って来た。 今まで疎遠で、あまり付き合いのない。 というか、そんな叔父の存在なんておれは全く知らなかった。 おれが生まれて間もないころは、まだ日本にいてそれなりの音楽家だったって話を初めて聞いた。 「あったわ!これこれ。何だかよくわからない音楽なんだけど、CDだって出してたのよ。ほら」 母さんは叔父のCDを探し出しておれに見せてくれた。 「――凄いでしょう」 ほくほくと笑う母さんは、良くわからないと言っていてもそのCDを大切にしていて。 今の今まで話題にすら上らなかった弟の存在を、本当は好きだったんだろうなと思える笑顔でそれを見つめた。 おれくらいの年ごろの子なら分かるんじゃないか……って、そのCDをもらったおれは、学友との昼食会とかで出かけた母さんを見送ってから、部屋に引っ込んだ。 ダークなイメージのデジタルアートで飾られたレーベル。 馴染のないレーベルだから、これはインディーズとかいうものかな。 しばらく自分の机でパソコンと向き合って、飽きたところでCDの事を思い出した。 ケースから取り出してCDドライブに突っ込んで。 家には誰もいないから、ヘッドフォンは使わなかった。 初めて聞いた音。 振動がディスプレイを揺らがせて、重低音がダイレクトに身体に響く。 ――何だこれ? 思わずスピーカーに繋いでボリュームを上げた。 おれの鼓動と重なって、重い音がおれの肌を叩く。 身体の表面からじわじわと音が侵食してきて、次第に奥が痺れてきた。 ――何だこれ。 胸が苦しい。 奥が、くすぐったい。 歪んだギターの音に全身を撫でられて、ブルッと背中が震えた。 鳥肌が立って、波に攫われる砂粒がまとわりつくような感覚。 ――気色わりぃ。 耳の奥がくすぐられて、もう一度、今度は全身がブルッと震えた。 震えているのに熱い。 変なところがくすぐったい。 ――変なところが…………。 重いリズムを刻むドラムとベースが、肌から体内へと侵食する。 震える腹の奥から変な感じが広がってゆく。 ジリジリと冷たい、鋭くおれを掻き毟る何か。 じれったくて、微かに込み上げる衝動。 おれの股間が膨らんできて、見たこともないくらいにデカく盛り上がっている。 何だよ。 何なんだよ! こんなの……こんな。 思わず膨らみを押さえつけたら、力が抜けるような感覚になって。 おれは夢中でそこを撫で続けた。 耳の奥が音で満たされて、脳ミソがくすぐったい。 全身の肌を音に撫でられて、痺れて、じれったくて、何も考えられなくなる。 持久走でもしているみたいに心臓がバクバクして息が苦しい。 なのに、止められない。 止まらない。 そのうちに、尻の奥から腰にかけて変なザワザワが広がって。 次の瞬間、思わず泣き出してしまいそうな疼きに襲われて。 情けない声を上げるおれは、椅子の上で背中を丸めてうずくまった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |