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爆音オルガスムス
12







クラス替えを伴った二年への進級。

今年もメンバーの誰ともクラスが一緒にならなかった。

中学の時と同様に、クラスではあまり馴染まないおれは、放課後になるとすぐに部室に向かった。

新学期になってからの月の中頃。
部活に向かうため教室から出るところで、おれは誰かと接触して肩を弾かれた。

「ああ……。悪い」

不意に向けられた言葉は何気ない一言だ。

けれど、おれはその声が気になって振り返った。



おれよりずっと背が高くて。

ブレザーの背中がやたら広い、短い髪のスポーツマン。



その声の持ち主が、おれの腹の奥を掻き回すようなくすぐったい感覚を寄越すから。

おれは、それからソイツが気になり出して。

その名前をすぐに覚えた。



授業で奴が教科書の音読をするたびに、おれのくすぐったさは大きくなって。

しん……と静まり返った教室内に甘く響く声が、まるで音楽を聴いている時みたいにおれを切なくさせる。



気付くとおれは、ソイツの姿をいつも目で追うようになっていた。



部室の外、窓の下のグランドにソイツの姿を見つけたとき。

不意に、トラックに佇むヤツが振り返った。


おれと視線が合ったような。
そんな気がして。



それからは、ソイツの姿が目に焼き付いて離れなくなった。



胸の奥が、ざわざわと何かを予感して。

それは、確かな感情へと育っていった。





はじめに、好きになったのは『声』。

それから、笑った時のきれいな口元。

優しい視線。



おれはこれから恋をする。

初めての恋を経験する。





苦しくて、切なくて。



そして、幸せな『初恋』。





やがて薔薇色になる。

おれの青春。






『爆音オルガスムス』
――終――


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