僕らの願いが叶う頃【I love you.I『trust you』】 take out1 目が醒めると、おれの視界に母の心配そうな顔が映り込んだ。 「──芳さん。大丈夫?」 「諏訪は……?」 「まあ……。なあに?開口一番は諏訪さんなの?」 母は苦笑いでおれを見つめて、安心したように頬を緩めた。 「寺崎さんとご一緒に、病院のお向かいまでお食事に行かれたわ」 寺崎? 柴犬と飯? 「今……何時?」 頭の中は内側から粘土を塗り込められているように重くて、はっきりしない。 「もうすぐ8時」 8時か。 随分眠っていたんだな。 いつのまにか、左手は石膏みたいなもので固められているし……。 「麻酔から醒めたら、帰宅出来ると先生が仰っていました」 「──心配かけて、ごめん」 「いいえ。聞けば、諏訪さんを事故から守ったとか。……名誉の負傷ですね」 「いや……そんないいものじゃ……」 「ふふっっ。ご謙遜ね」 ふんわりとカールする柔らかな髪を揺らして。 母は少女のように笑って、その美しい笑顔をエクボが飾った。 父が愛する永遠の令嬢。 この人を越える女性を、おれはまだ知らない。 姉は父に似てオッサンだからだ。 [次へ#] [戻る] |