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高校バニラボーイズ【謹賀新年】
高校バニラボーイズ【謹賀新年】8



8



どこでどうなったらこんな運びになるんだろう。



シュウヤは、ベッドに仰向けて、ぼんやりと滲むような思考を巡らせていた。



家に着いてから、すぐに風呂を沸かしてふたりで温まった。
存分にイチャイチャしながら、リョウマを愛したいと思った。

それが、いつのまにか形勢が逆転して。
リョウマの長い腕と広い胸に抱かれて。
反対に愛し倒されている自分に疑問を抱いていた。

手練れた愛撫に蕩けさせられて。
自分の好きな熱い指先が、疼きを慰めるように、濡れて滑る肌を撫でて。
繰り返し囁かれる自分の名前が、パスワードのように身体を支配して。

拓かれて、受け入れて。
掻き抱かれた。

背ばかり高くてひょろ長かった少年の身体つきが、大人の男へと成長してゆく。
骨格も筋組織も、大切なものを守っていけるように大きく成長して。
リョウマの自己認識とは乖離していくように思えた。

なのに、リョウマはそんな変化を受け入れて、こうやってシュウヤを抱く。

少年のままでいたいと願っていたリョウマ。
男として成長する事を拒んでいるように見えていたけれど。
夏のあの日から、リョウマの内面が変わった。

男らしいとか乙女とか。
そんな既存の括りでまとめる必要なんてないと伝えたシュウヤの想いが伝わったのか。
リョウマは『自分らしく』なった。

料理が得意なのも、手芸が好きなのも。
好きな人に尽くしたいのも、抱きしめてもらって甘えたいと願うのも。
高潔な精神と強い肉体を鍛錬するための武道が譲れないのも。

性別とは関係ない『個性』なんだと認識した。



リョウマはシュウヤを抱いて、容赦ない快楽のうねりを与えていた。

好きだと何度も伝えながら、震える身体を抱きしめて、ジワリと体内の凝りを押し上げる。

それはまるで、昨夜の事に似ていて。
そんなリョウマの愛し方に、シュウヤは戸惑っていた。

抽挿を控えたリョウマの動きが、ゆっくりとシュウヤを高みへと引き上げる。

「リョウマ……」

堪えきれない疼きに支配されて。
集まった熱が焦れったくて。
腰に集まってくる甘美な痺れが、溢れだしそうなほど膨れ上がっている。

「ねぇ……もう」

シュウヤが、頂に導いて欲しいとねだる。
なのに、リョウマは愛しさを注ぐ視線をそのままにして、シュウヤを解放しようとはしなかった。

「──リョウマぁ」

シュウヤの媚態に根負けしそうになって、リョウマは苦笑を誘われる。

「シュウヤは達ったことある?」

鼻先を突き合わせて、リョウマが尋ねる。
まだまだいかせてもらえなさそうな雰囲気が伝わって、シュウヤは不満を表情に乗せて訴えた。

「いつもいってるよ」

「あ──それじゃなくて」

リョウマは腰を引いてから、再びシュウヤの快楽を押し上げた。

「ふっ…………んぅっ……や!リョウマッッ」

焦らされるだけの身体の奥底に、沈んだままの快楽が淀みとなって蠢いている。

気が触れてしまいそうな焦燥が、シュウヤを淫らに掻き乱して。
キュウッ……っと触れ合う部分がきつく締まって、シュウヤの快楽を伝えた。

「そう……それ。それで、達った事ある?」

「そんなの……」

「ないの?」

「だって……」

「昨夜はおれをいかせたでしょ?」

悪戯っぽく表情を変えるリョウマに指摘されて、シュウヤは何も言えなくなる。

「──意地悪……」

「違うよ。……愛してるだけ」

「なら、もう達かせてよ!」

涙目で訴えるシュウヤが、可愛いと思える。

そんな自分の内面の変化を知って、リョウマは照れくさかった。

「焦るのやめて……。もっと、気持ちいいこと楽しんでよ」

微笑みながら、シュウヤを弄ぶように刺激を与え続ける。
リョウマは深い性体験を先に経験したことで、少しだけ優越感を持っていた。

あんな官能を知ってしまえば、男の反射的な快感なんて耳かき程度だと思えて可笑しくなる。
いつまでも長引いて、絶え間なく満ち足りて。
快楽の波に揺蕩う、本当に幸せな体験だった。
それをシュウヤにも体験してほしい。
今度は自分が導く番だとリョウマは思った。

快楽に咽ぶシュウヤの姿があまりにも魅力的で、気を抜くと危うく達ってしまいそうになる。
リョウマは拷問にも似た官能の責め苦に耐えていた。

潤んだ瞳で視線を泳がせて、リョウマを求める手が伸ばされて。
思わずその手を握って抱き寄せると、シュウヤもまたギュッとリョウマに抱きついてきた。

淡い悦楽の波に揺らされて、まだ大きな波を掴みきれないシュウヤは、焦れったい疼きに身悶えして。
乱れるさまがリョウマを更に切なくさせる。



可愛い

愛しい

嬉しい



そんな感情があふれてきて。

リョウマはそっとくちづけを贈った。







最近、自分は変わったと自覚している。

シュウヤと付き合う前は『海斗先輩』が理想のタイプだった。

高い身長と広い肩の、細く締まったシルエット。
知的で優しい、物静かな年上の人。

そんな素敵なひとに甘えたいと願っていた。



決して自惚れではないと思いたいけれど。

今は、自分自身がその憧れていたタイプに近づいていて、正直戸惑っている。

自分はナルシストでもないし、ましてやあの当時は、自分がこんなふうに変わってしまうなんて思わなかった。

たった一年足らずで、身長は更に伸びて。
今は少なくとも諏訪先輩くらいはあるんじゃないかと思う。

鼻筋が伸びてあごが発達して、顔つきが大人びてきた。

鏡を覗くたびにそんな風に思えて複雑な気分だ。

ひょろ長い木の枝みたいだった身体が、痛みを伴う程急激に成長して、やはり植物並みだと思えた。



もちろん、同様にシュウヤも成長していて。

ふたりで成長しているからなかなか気づかないでいるけれど、実際シュウヤの身長も、とっくに170を超していると思う。



自分たちは、成長期なんだな……と否応なく実感させられた。



だからという訳なのかは分からない。

けれど、自分たちは確実に、愛されるだけの子供ではなくなっている。

愛する事ができる身体を持って。

愛する術を知って。

もっと、愛しさを募らせた。



外見が内面に与える影響は大きい。

手芸や料理は趣味だから、男とか女とかは関係ない。

けれど、こと恋愛に関してとなると。
なんとなく、内から芽生えてきた欲みたいなものがあって。

抱きたい衝動に駆られることの方が多くなってきた。



もちろんシュウヤに抱かれるのは好きだけれど。

普段の心は穏やかな淑女のようでも、シュウヤのフェロモンの前では、ケダモノのような猛りを覚える。



ホルモンのせいなのか何なのか分からない。

素敵な兄貴なんてどうでもいいし。
実は体毛の処理もガラじゃないような気がして最近はサボっている。



乙女なリョウマは、少しずつ男らしく成長していた。



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あきゅろす。
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