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高校バニラボーイズ【謹賀新年】
高校バニラボーイズ【謹賀新年】7



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新年の朝は快晴で、前日から下ごしらえしていた雑煮の出来は満足できるもので。
縁起物の料理を並べた食卓を挟んで、リョウマは改まった気持ちで、シュウヤと向かい合った。

「あけまして、おめでとうございます」

居住まいを正して頭を下げるリョウマに、一瞬面食らったものの。
こんな堅苦しい挨拶もリョウマならありか……とシュウヤは思う。

「今年もよろしく……。あの……」

突然、カアアァァァァッッッ……と赤くなるリョウマの反応に、一体何が起きたのだろうと驚いたシュウヤだったが。
なんとなく『色々夢見ているんだろうな……』とだけは察することが出来た。



母の手作りの料理もあるけれど、ほとんど自分で調理した。
それを喜んでくれるシュウヤがいて。
特別な日をこうやってふたりで迎えて、暦上の行事を共有出来るなんて。
本当に結婚したみたいだ。



リョウマはシュウヤの予想通り、そんな幸せに酔っていた。



まだ未成年だけど、少しくらいなら……と屠蘇器に用意した酒をふるまう。

屠蘇は好きじゃないからと、あえて形だけ日本酒を用意した。

「あけましておめでとうリョウマ。これからも、末永くよろしくね」

挨拶を返して微笑んだ。

すると、盃を頂いたリョウマの、頬を染めた照れくさがりが初々しい新妻を彷彿させて。
シュウヤを甘酸っぱい気持ちにさせてしまう。

──なんだかなあ……もう

シュウヤは、くすぐったすぎて苦笑を誘われた。



午後になって、受験生らしく北海道神宮に参拝して。
シュウヤは志望校への合格を祈った。

これからの毎年、シュウヤと一緒に参拝できますように。
本殿の前で、合格を祈るシュウヤの隣に立って、リョウマはそう願った。

予想以上の混雑ぶりに辟易しながらも、学業成就の御守りを手に入れた。
おみくじを引くとふたりとも中吉で、成功の可能性を秘めた幸先のいい始まりを境内の木の枝に残してきた。

風花が舞う、混雑した帰り道。
ふたりははぐれてしまわないように手を繋いで。
ゆっくりと人の波に乗って、寄り添って参道を歩いた。

途中、境内に向かう参道の坂道で、やたら目立っている馴染の二人組を見かけた。
相変らず仲睦まじく連れ立って。
色々と超越している存在に見えていても。
彼らもやっぱり人の子で。
合格祈願くらいするんだな……と、ほほえましく思えた。

氷点下の空気は息を凍らせて、容赦なく体温を奪い。
雪を踏みしめる靴音が鳴るたびに、気温が低いんだな……と実感する。

鼻の頭も耳たぶも、痛いほど冷えていて赤くなっていたけれど。
人知れず繋ぐてのひらから伝わる互いの体温が暖かくて。
かえって、寒さを理由に寄り添える環境が嬉しかった。

クリスマスプレゼントのスヌードを身に着けたシュウヤは、揃いのものをまとっているリョウマの襟元を見て、改めて自分たちの幸せな関係を想う。

「帰ったら、すぐに風呂で温まりたいね」

笑顔を向けると、リョウマがやっぱりカアアァァァァッッ……と、真っ赤になってシュウヤを見つめ返した。

シュウヤはクスクスと笑って、リョウマの肩に寄り添った。



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あきゅろす。
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