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この素晴らしい夜に
クリスマスイブ4



週末のスペシャルライブの後は、おれたちはいつも店の事務室に泊まる。
深夜で交通機関がないから、店の後片付けを条件に、深夜から翌日の丸一日の店を借りている。

その間はおれの自由で、御堂との甘い時間を過ごす事が習慣になっていた。

今回のライブの後の時間も、店長には依頼済みで。
ライブは21時までだけど、後片付けを条件に店を借りる事が出来た。

もちろん、それはライブの打ち上げとかのためではなくて。
おれと御堂のふたりだけのクリスマスパーティーのためって事で。

「──うん。それで十分。泊まっていける?」

「あ……うん」



頬染めて、なんて顔してんだよ。
羞じらうなよ。
可愛いから。

色々想像してしまうだろ。



「イタリアンと中華、どっちがいい?」

「え?」

「近くの店に、なんか食べるもの頼むから」

「あ……いや。どっちでも」

「クリスマスだもんな。イタリアンの方がいいか。……シャンパンは飲める?」

「なに?本格的?」

御堂は少しだけ驚いていた。

「だってさ……。夏にデキたカップルって冬まで持たないとか言うしさ。なんか、確認したいじゃん?……愛?」

「それは何情報だ?……つか、とっくに冬休みに入ってからそんな事言うな」

途端に不機嫌。
別れるとかいう言葉はおろか、ニュアンスすらも御堂は嫌う。
本当に嫌がる。

可愛いな、御堂。

「うん。ただ理由付けてイチャイチャしたいだけ」

笑って見せると、御堂じゃなくて隣のテーブルが爆発した。
鬱陶しいったらない。

肝心の御堂は、それでもそれなりに赤くなって、挙動不審にそわそわしていた。

「──分かった」


お!
素直。


「おまえ、……饒舌すぎ」

「ふつうでしょ?」

「コミュニケーション力皆無なくせに、なんでこういう時だけ力発揮するんだよ」

「おれの場合はコミュニケーション力が無いんじゃなくて、コミュニケーションしたくないってだけで……」

御堂の視線が疑惑に満ちていた。

「おまえとだけは、あらゆる言語でコミュニケーションしたい」

意味深に笑って伝えると、察しのいい御堂は、顔中耳まで真っ赤になって、視線でおれを責めていた。



隣のテーブルは轟沈していた。



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