[携帯モード] [URL送信]

honey-pot journey【卒業旅行】
事件に巻き込まれました2【御手洗薫】





札幌に到着して、ふたりはJR駅から地下鉄さっぽろ駅へと降りて行った。

プリペイドカードを改札機に通して、ホームに向かって階段を降りる。
構内には別方面、麻布ゆきの電車が停車していて。
階段から見下ろすホームは大変な混雑を見せていた。

春休み中とあって、近隣のアジアからの観光客であふれ返っている。

ホームに降りると、間もなく構内アナウンスが響いて、警笛と共に電車が入って来た。


南北線真駒内方面ゆき。


最後尾の車両なら、慌てなくても十分に間に合う。

ふたりは混雑するホームの人の波をかき分けながら、到着した電車に向かって先に進んだ。

不意に、人混みに紛れて御堂から諏訪が離れてしまった。

またか……と思いながら、御堂は諏訪の姿を探す。

諏訪は人の波に逆らえない弱さがあって、よく御堂からはぐれてしまう。

それでも背が高いふたりにとっては、人混みは何の障害にもならない。

群衆から頭ひとつ飛び抜けて、高い場所から見渡す事が出来るため、離れてもすぐに互いの元に戻る事が出来た。

「──…ほら晃斗!電車閉まっちゃうって!早くっ!」

御堂の姿を確認しながら真駒内ゆきの電車に向かっていた諏訪は、突然手を掴まれて反対方向へと連行された。

「…………え?」

人の波に逆らえない諏訪は、そのまま反対方向への電車に拉致られて。


唖然とする御堂の表情を見たのを最後に、ドアが左右から閉じてふたりを別ち。
麻布ゆきの電車は、無情にもふたりを引き裂くように発車して行った。



「うっわ、危なかったぁ〜……。あ、ラッキー!席空いてんじゃん。晃斗も座ったら?」

車内の座席に座った見知らぬ男子が、諏訪の手を握ったまま自分の隣に座る事を促して。

初めて諏訪を見上げた彼は、見る見るうちに表情を強張らせた。

「───誰?」

驚きとともに呟いた言葉で、諏訪はこの人物が人違いをして自分を引っ張って来たのだと察した。

「諏訪……朱鷺雄です」

諏訪はあくまで真面目に、誠意を持って答えた。

「いや………そうじゃなくて」

期待した答えが返ってこない事に困惑されて、折角自己紹介したのに……と、諏訪は少しだけ傷ついていた。




[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!