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honey-pot journey【卒業旅行】
卒業旅行は計画的に2【ゆずは】





「…………何?コレ?」

13時25分新千歳空港着ANAL801便の窓からは、しんしんと舞い降りる雪が風景を白く彩っていた。

「うわ〜…雪だよ……。さすが北海道。もう三月なのにまだ降るんだ〜……」

「だから言ったじゃん……。冬の北海道に来るなんて、自殺行為なんだよ……」

「また、オーバーな。これぞ北海道ってカンジでいいじゃん!」

「……やっと冬が終ったと思ってたのに」

体脂肪率が低く、寒さに弱い晃斗がげんなりして席を立つ。



――やっぱり来るんじゃなかった



突然降って湧いた北海道旅行。二泊三日分のスケジュールを空けるため、引越の準備を前倒しし、今朝まで荷造りしていた二人。
当然夜のお楽しみもお預けで、始めから乗り気でなかった晃斗は面白くない。



――さっさとホテルに行ってヤリてぇ



元々寒さが苦手な晃斗は端から観光なぞ興味はない。
興味があるのはカニと梨玖。

観光は体力の消耗を極力控えたコースに設定した。
ホテルもワンランク上のホテルに変更した。

白く染まった飛行場を眺めてはしゃぐ、梨玖を見てぼそりと呟く。

「今日と明日は寝かせねぇ……」

「え?ナニ?」

「いや、別に。で、飛行機降りてどこ行くんだっけ?」

「さぁ?パンフ、晃斗が持ってたじゃん。俺じゃ頼りないとか言って」

俺が当てた旅行なのにさ〜。荷物を取り出しながら唇を尖らす梨玖に、苦笑する。



――ホント、かわいいよなコイツは



今すぐにでも食べたくなるその唇を見て思う。

何年も見続けてきた無自覚の仕草の一つ一つが、飽きることなく好きだ。どれだけイカレてんだと自嘲するも、真実なのだから仕方ない。



天井に照明器具のない新しいデザインで設計された新千歳空港。
観光地北海道の玄関口でもあるそこはオフシーズンである今も一地方都市にない賑いを見せる。その客の数が、需要の高さをうかがわせていた。

「あ、晃斗、花畑牧場がある!生キャラメル買って行こうぜ!」

「馬鹿、荷物になるだろ?あ、免税店だ。ちょっと見ていい?」

「……荷物になるんだろ〜?」

日常から出た旅先ではしゃぐ梨玖が晃斗の手を握る。
旅先で、知っている人間がいないとはいえ、ここは日本。
普通のカップルだったならば躊躇うことなくできる人前のキスもできず、手を繋ぐことすら、奇異の目を向けられる。それはここも地元も同じはずだった。



――旅の恥は掻き捨てってな



晃斗がぎゅうっと梨玖の手を握りしめる。

本当はずっとこうして歩きたかった。
晃斗は自分が他人にどう思われようが、全く気にしない。だが、梨玖は違う。
晃斗や、友達の大輔など、知っている人間にはもう臆すことなく接するが、自分がゲイだと知らない人間にはまだ警戒している。
晃斗が地元で手を繋がないのは、そんな梨玖のためだった。

「……晃斗、……手」

今更ながらに、晃斗と繋いだ手に気が付いた梨玖が晃斗を見上げる。

「いいじゃん。俺らのこと知ってるヤツはいねんだし」

「でも……」

「ホントはここでキスして見せ付けてやりたいくらい」

「……もう、何バカなこと言ってんだよ」

そう口ごたえしながらも、うれしそうに梨玖がはにかむ。



――やっぱ、来てよかったかも



ショッピングモールのくじ引きで当たった国内旅行。卒業旅行のつもりがプチハネムーンになったようで、なんだか嬉しい。

「行こうぜ」

晃斗が右手の案内図に目を落とし、エアポートライナーを目指す。

繋いだ左手で梨玖の手を引き、梨玖がカタカタと音を立てながらキャスターを引いていく。



エアポートライナー快速に乗り、札幌まで約40分。

二人のプチハネムーンが始まる。



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