RISING SUN
駅の三つ巴 2
携帯を手にして、履歴から発信しようとした時。
駅正面出入り口から「朱鷺雄く〜ん」と、高音で鼻にかかった独特な声が諏訪の名を呼んで、おれたちの意識を引き付けた。
声すらもフェロモン全開のあの女は、おっ…………。
…………いや。
諏訪のカテキョ『茉莉さん』だ。
彼女が現れた途端に、おれたちの周りの空気が張りつめた。
特に『砒素っ娘』は殺気すら放っている。
いくら可愛くてもさすがは『女』だ。
根の強い精神力はおれの想像をはるかに超えていた。
当の諏訪は仏頂面で、一応諏訪なりの拒絶オーラを醸し出しているのだが。
『茉莉さん』には通じていない。
通じていないのか、知っていてあえてスルーしているのか。
いずれにしろこちらの方も大した女だ。
『茉莉』さんは、ボクサーパンツ程の小さなズボンと、カカトの高いサンダルを履いただけの生足を惜しげもなく晒して。
長く緩やかにカールした髪と。
羽衣みたいな薄っぺらいフワフワしたチュニックとやらの中でも、はっきりと分かるくらいデカい乳をユサユサ揺らしながら。
ついでに腰まで振ってやって来る。
デカい乳と細い二の腕とのバランスがやたらエロい。
細身の女独特の、腋の下の薄い肌の細いシワが更にエロ…………。
いや
よそう
オッサンかおれは……
彼女はそのまま、駅改札口にたむろっていたおれたち集団の存在をものともせずに割り入って、諏訪の傍にやってきた。
「うあ……ホントにデカ…………」
余計な事を口走りそうになったヒロノブが、カズノリに口を塞がれた。
モガモガ言いながら抵抗しているが。
はしゃぐなヒロノブ。
この女は諏訪以外は眼中に無い。
「お待たせ」
傍に立つや否や諏訪の腕に絡み付く。
諏訪は珍しく仏頂面を迷惑そうな顔に変えていた。
微妙で分かりにくいが、親しいやつならそのくらいの違いは分かるだろう。
彼女には通じないが……。
というか「お待たせ」って何だ?
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