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RISING SUN
全員集合 5



諏訪の家庭教師は胸のデカイ女子大生だ。

自分を飾り立てる術を存分に身に付け、それが武器になると分かっている。

諏訪を受験勉強に集中させるために親父さんが手配した飛び道具で。

まあ……思惑は外れているが、今の諏訪は受験には前向きになっているからいいんだろう。

諏訪にとっては、かえって勉強の邪魔になっているようだが。



人前でもはばからずに諏訪に絡んで馴れ馴れしい。

エロい仕草で挑発して、諏訪が辟易していても『家庭教師』だから邪険に出来ないでいることに気付かないで、照れているんだと勘違いしている。

年下の男を狩る、ハンターのような肉食系。

おれは『おっぱい』に煽られて、嫉妬して。
諏訪に乱暴を働いた事があって。

それは酷く恥ずかしい前科で。

そんな事があったにも関わらず諏訪はおれに優しくて。

幸せな反面、さらに惨めな自己嫌悪を味わった。



「食う?」

諏訪がポテトチップスの袋をおれに差し出してきた。
おれを慮る表情がくすぐったい。

おれのこのゴチャゴチャした感情を察して、手を差し伸べてくれたんだろう。



おまえには敵わないな、諏訪

可愛くて、愛しくて
抱きしめたい

だけど
周りがパニックに陥るだろうから
思うだけにとどめなければ……



そんな事を考えながら、おれの手は差し出された袋を通り越して諏訪の唇に触れた。

そして、食いカスを付けた諏訪の口元を親指で拭ってやると。
諏訪は、その視線に熱い感情を乗せておれに送り返してきた。



じっと見つめ合うおれたちは怪しすぎた。

周りは息を呑んで静まり返って。
ヒロノブまで珍しく干渉を控えて大人しくなり。
皆が、おれたちを見て見ぬふりをする。



諏訪が、顔を赤くしてしまったのがさらに効果的で。

そんな反応を見せてしまえば、諏訪がおれの事を好きだってのが、フルオープンになってしまうだろう。



おれたちは。
人前でイチャイチャする事はなかったが。

腫れ物扱いを存分に逆手にとって。
意味深な行動で周囲を圧倒した。



イヤらしい在り方だが、『疑わしい』というスタンスを確立させて、周囲の干渉を拒む。



知りたいが知るのも怖い



おれたちは。
周囲の人間を、そんな心理状態へと誘導した。



膠着状態が、不意に鳴った諏訪の携帯で解消された。

今度はディスプレイに表示された発信元を見て、相手を特定したようだ。

応答はスムーズで、さっきよりは親しげに見える。

だけど、行き先を確認してくるあたりは『おっぱい』と一緒だ。

諏訪は同じように応えている。

通話が切れてから、相手を訊ねると、『先輩』と答えが返ってきた。



さらに嫌な予感。



『おっぱい』と『先輩』が鉢合わせなんてしてしまったら、どんな事になるか……。



おれは想像しただけで、憂鬱とそら恐ろしさのあまり。
目的地に到着すらしていないのに、もう早帰りたくなってきてしまった。

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あきゅろす。
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