RISING SUN
全員集合 4
「トキオ。誰からだ?……女の声だった」
諏訪の隣から、ヒロノブがニヤニヤしながら諏訪の脇をつつく。
ヒロノブが訊ねた途端に周囲から話し声が消えて、電車の振動が車内に届き、規則的なリズムを刻む音だけが車内に響いた。
ほぼ全員がここの会話に集中しているのが明らかで。
おれはそら恐ろしい。
「──おっぱい」
……やっぱりあの女か
というか、周りに女子もいるんだ
そういう代名詞はどうかと思うぞ……諏訪
「え?カテキョの?」
「うん」
「え?……なんて?なんて?」
「どこ行くの……って」
「──………それだけ?」
「うん」
「………」
味も素っ気もないやり取りにヒロノブは呆気に取られていた。
期待していたヒロノブのテンションがガタ落ちだ。
「他に何か言ってなかった?」
「あ?……別に……」
訊ねるヒロノブを一瞥して、諏訪は干渉を疎ましがる。
目の前のふたりのやり取りが虚しすぎて。
ヒロノブには申し訳ないが、おれは笑いを堪えるのが苦しい。
自分で脇腹をツネって、痛みで笑いを抑えるのも限界に近かった。
すると、おれの隣のカズノリがいきなりブフッ……と吹き出して。
あっはっはっはっ……と高らかに笑い出した。
「あるわけないだろ。……期待しすぎだヒロノブ」
カズノリの指摘にヒロノブは不満を示す。
しかし、カズノリの笑い声が周囲の張り詰めた空気を一蹴して、車内はまた少しずつざわめきを取り戻した。
「トキオにとっては所詮カテキョだしな」
トモアキまで、期待を裏切られたヒロノブにだめ押しをする。
カズノリはおれと諏訪との事情を知っている。
だからそんな風に断言出来る訳だが……。
「──ね?」
と、トモアキが彼女に同意を求めた。
にっこりと笑顔を返す彼女は可愛い。
微乳もなかなかいいじゃないかと思える。
美少年にも美少女にも、どっちにも見える曖昧な存在。
それはそれでかなり魅力的だ。
しかし………。
イチャイチャイチャイチャしやがって
おまえの彼女に諏訪の何が分かるってんだ
いい加減にしろよトモアキ
……と、感じてしまうおれは心が狭い。
だいたいおれはこうやって人前でイチャイチャするのは苦手なんじゃなかったっけ?
イチャつかれたからって、羨ましいわけでもない癖に。
なにイラついてんだ?
ああ。
なんだか自分が嫌だ。
自己嫌悪。
ああ〜〜〜〜〜っっ!!
くそ!!
よりによってまた『おっぱい』だし。
そうだ。
結局それなんだ。
前科あるだけにキッツイな。
おれ。
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