RISING SUN
登竜門6
音合わせが始まっているらしいことに気付いて、おれは重たい腰を上げた。
力の入らない下半身に気合を入れて、PAブースに戻る。
音響機材の前から、店長がおれを迎えて意味深に笑いかけた。
手招きをされて、となりのパイプ椅子に腰かけるおれの様子を見て、ニヤリと笑うその悪戯な満面の笑顔は、エロネタにはしる時の諏訪にそっくりだ。
「──かわいそうだろ?そんな目で見るな」
シゲさんが珍しく不機嫌そうに店長を諌める。
理由は分からないが、おれはシゲさんに同情されたらしい。
そう言えば、何だかいつもとは違う。
店長のおれへの視線が、バイトの野郎を見る厳しい目じゃなくて。
なんか、こう……。
「どんな目だよ」
「『受け』だと分かった途端にあからさまに見る目が違う。肉食丸出しでみっともない」
え?
おれ?
ウケ?
ちょちょちょちょちょちょっっ!!
違うっ!!
たまたま今回やられただけであって、おれはウケじゃないっっ!!
……つか。
彼氏の身内にこんな事がバレるのって、なんか凄い嫌だ!
おれが事情を察してあたふたと挙動不審に陥ると、店長はそんなおれを一瞥してから、シゲさんに向き直った。
「冗談だろ?……未成年相手に欲情するかよ。こちとら厳密にR指定だ」
「目がそう言ってない」
痴話喧嘩?
おれが原因で気まずいのか?
と言うか、何度もしつこいようだが、おれはウケじゃない!!
「──あの」
「甥っ子の恋人に手え出すほどケダモノじゃないよ」
「オマエのチン軽は信用ならん」
口を挟もうとしても、おれを置いたまま言い合いを続けるふたりの間には、もう入り込む余地はない。
「はい、そこの音響さん。本番始まるから集中してね〜〜」
温厚な照明担当のスタッフが、おれたちの浮わついた状況に刺さり込んできた。
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