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RISING SUN
いつかの夜5



二日目。

会場が活気を帯びて、再び軽音の祭典が動き出す。



テント村は、夜明けとともに起き出したファンたちのざわめきに充たされて、歓声があちこちから聞こえて騒がしい。

蛇口から迸るような水音と、草を踏む足音。
テントの波を撫でていく風の音。

本日の、ファンとしての意気込みを語り出すヤツ。
どのステージを巡るか、はしゃぎながら打ち合わせする女たち。
澄んだこどもたちの声。

見知らぬ者同士の、不思議な一体感がテントの布越しからでも伝わってくる。

好きな音楽を通じての交流。
同じ時間と空間で、寝食まで共にした連帯感。

そんな空気がここにはあって、おれがそれに触れることが出来た奇跡を、幸せだと感じることが出来た。

全ては、諏訪が与えてくれた。
おれは、こんな経験をさせてくれた諏訪との出会いに、感謝すら覚える。



昨夜は遅くて、睡眠時間は約五時間。

最悪のコンディションにも関わらず、思ったよりも熟睡出来たのか、頭の中が妙に冴えて落ち着かない。



あれからの諏訪は、おれを離してくれなくて。

けれど、それ以上の何かをするわけでもなく。
カップル用の寝袋にふたりで潜り込んで、ただ抱き合って眠りについた。

ライブの後だから、諏訪の身体には興奮が残っていて、それを放置していては辛いはずなのに。
……なのに諏訪は、愛しさをキスとハグで示して、甘い感情だけを向けて、ただ抱きしめて、ずっとおれの頭や背中を撫でてくれた。



おれ自身が分からないおれの感情。

漠然とした不安を伝えてしまうなんて事は出来なくて。
やりきれない感情を内に抱えていたはずのおれは、温かい諏訪の胸に抱かれて。

不思議なくらい安心して。

野外での簡素なねぐらなのに、信じられないくらい気持ち良くて。
深い眠りに引き込まれた。

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