RISING SUN
いつかの夜3
人目を避けるようにステージ脇のスピーカーの陰に連れてこられたおれは、なんとなくきまりが悪くて諏訪をまともに見ることが出来なかった。
向き合って立っていながら俯くおれに、焦れたようにあごをすくって、おれの顔を上向かせた諏訪が、潤んだ視線を寄越してそっと顔を寄せてきた。
唇が近付いて、吐息の熱を感じる。
重なる呼吸が混じり合って、諏訪の熱が直接おれに注がれて、意に反して鼓動が重く、速くなる。
ついさっきまでの背徳感はどこに行ったのか。
『早く欲しい』なんて不埒な欲求に捕らわれたおれを、諏訪の柔らかな誘惑が包み込んだ。
おれの舌を撫でる、諏訪の舌使いが優しすぎて焦れったい。
縁をなぞるような器用な愛撫に息が上がる。
抱き寄せられて、深く繋がるようなキスは、諏訪の感情をそのままおれに伝えているようで、そんな事にさえも安心を求めて縋ってしまう。
なのに、エロいキスにも肝心なところの反応がいまいち鈍いおれが居て。
何か色々と複雑な心境で、単純には反応しきれないみたいで。
感情と股間は別物だったのか……と、改めて考えさせられる。
キスを寄越しながら、そんなおれの股間に触れてきた諏訪は、期待外れな状態を知って苦笑した。
「どうしたの?」
「何が?」
「疲れてる?」
そんなわけないだろう。
疲労で勃たなくなるってんなら、受験と言う強大なストレスの前で、おれはとっくに役立たずだ。
「いや……立て続けは、ちょっとキツイ」
とりあえず言い訳を伝えたおれの都合なんてたいした気にもとめないで、諏訪はその場に膝をついておれのベルトを外してきた。
ズボンの前を開けて、パンツから中途半端に勃ちあがったおれを引きずり出して、そのまま穂先を舌先で舐める。
熱く柔らかい感触。
おれを包み込み、蠢く舌の動きが心地よくて。
そこが少しだけ反応して膨らんできた。
「おれ……無理そうなんだけど……」
ほんの少し反応したとしても、今夜は事に及べそうもない。
余計な事を考えすぎて集中できなくて。
こんなおれでも、繊細にできてるのか……と自分でも意外に思えた。
「なんで?」
「尻具合い、悪くなりそうだし」
「御堂が挿れてよ」
「……や、それが無理」
「なに?……どうしちゃったの?」
「いや……別に、なにも」
「御堂」
諏訪は立ち上がって、おれの頬を両手で包み込むように触れてきた。
見つめる視線があったかい。
おれを欲しがっている癖に、おれを想って。
愛しさを込めて、おれを慮る瞳が優しくて。
胸が締め付けられるような疼きに苦しくなる。
なのに、触れてくる手のひらの温かさに、固く塞ぎ込んだ心が解されて。
おれは、どうしようもなく嬉しくて。
嬉しくて、愛しくて。
そして。
泣きそうになっている自分に気付いてしまった。
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