RISING SUN
いつかの夜1
なかなか終わらないアンコールに三度も応えて。
大暴れともいえるような演奏を叩きつけて会場を湧かせてから、冷めない熱を煽ったまま、奴らはステージから去っていった。
会場係員の誘導に従って、興奮したままのファンが捌けてゆく。
ざわめきと、嬌声。
人いきれと体温が生み出す熱気。
そんな中、機材を前にしながら、このおれも興奮していた。
予定のライブはすべて終了して、舞台も、会場も、打って変わって静かな闇に包まれてゆく。
まばゆい照明も、会場を揺るがす大音響も収束した今は。
ひっそりとした虫の鳴き声が、静かなステージのドームに反響していた。
機材が朝露に濡れないようにシートで覆ってから、電源を落としてスタッフも撤収する。
夢を見ているような気分だ。
傍に、あいつがいない。
それが、やたら現実味を帯びていて。
おれを言い知れない虚無感へと陥れていた。
ステージに立つあいつをいつも見てきたクセに。
何故か今。
そのステージがやけに遠くに感じられた。
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