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RISING SUN
壇上のアーティスト5



曲数を重ねるごとに、ステージの熱気も上がる。

ファンの興奮も最高潮で、中央のスタンドマイクを挟んで歌うアーティストと諏訪との微妙な距離感に、女性ファンが甲高い歓声を上げる。



凄い……。
奴らはこんなにもすごい。

いつのまにこんなに練習していたんだろう。

学業と両立させるなんて、信じられない。



その情熱は、もう揺らがない確かさを持っていて。
おれはこれからの奴らの行き先を予感していた。



ライブの合間にMCが入る。

アーティストの地元ファンへの感謝の言葉と、会場を設営したスタッフと主催者への感謝。
そんな意外と気さくで礼儀正しい姿勢が好感を呼ぶ。

そして、彼はバックバンドの連中を紹介した。
地元インディーズデビュー予定の予備軍バンド。
紹介と共に声援が飛ぶ。
連中を知らなかったはずのファンまでもが、この演奏に魅入られて、声援を送っている。

中でも、特に諏訪に対する期待があるようで。
テンガロンハットを目深にかぶっていた諏訪に帽子を取れとリクエストして、ステージの上の諏訪を困らせていた。
それがさらに好感を呼んで「可愛い」と言われてまた困っている。



あいつはどこでもあいつらしい。
性格は外見に反してホントに地味なんだよな。



最後の曲では、それこそ会場は興奮のるつぼと化して、一様にトランス状態に陥る群衆とステージが一体となり、人の声と爆音が融合したうねりが渦を巻いてのぼっていった。



凄いのはこのアーティスト。

けれど、それについてゆく連中の凄さを、おれは改めて実感した。



45分のステージ。



この時の連中の演奏を、ここに居た誰もが忘れられない興奮として記憶に残すことになる。



おれはまだ、それの本当の意味を知らないでいた。

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あきゅろす。
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