RISING SUN 壇上のアーティスト2 折れそうになる心に活を入れつつ、おれは本日ラストになるライブのために、音響機材の調整をした。 一度観客が捌けた会場を整備しつつ、ステージも設営に追われている。 次はメジャーのソロアーティストだ。 このアーティストの音響は、事前に諏訪のレクチャーを受けて叩き込まれてきた。 「おまえに任せた」まで言われてきたが、この土壇場になって諏訪の姿が見当たらない。 「あいつどこに……」 PAを前にして、辺りを見回すおれは店長に注意を促された。 「集中しろ御堂」 「いえ……諏訪が……」 「あいつは別の用事があるからな。ここはおまえが担当してやっつけろ」 「マジすか!?」 店長から与えられたプレッシャーによって更に緊張したおれは、とりあえず諏訪のレクチャー通りに調整して音合わせの待機に入った。 そういえばバンドの連中もステージの設営に姿がなかったな……と思っていたらステージの上に奴らが現れた。 ――――――って!? はあぁっっ!? いつものライブみたいに各々の楽器を携えて、もちろんその中には諏訪の姿もある。 唖然として思考停止状態に落ちたおれに、トモアキがマイクを通して話しかけてきた。 「PAさん。テストおねがいしまーす」 ステージの連中が、アホ面下げてるおれを見てクスクス笑っている。 何だ? 何だっていうんだ? おれは何も聞いてないぞ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |