RISING SUN 箝口令1 夕飯時を少し過ぎた頃、休憩を終えた店長とシゲさんが戻ってきた。 こうやって、ほぼプライベートに近い状況にいるふたりを見ると。 さり気に仲がいいと思える独特の空気があって。 ふたりの関係にどうして気付かなかったのかな……と、今となってはそっちの方が信じがたい。 そんなおれの視線に気付いた店長は、まるで厄介払いでもするように、メシを食ってこい……と、おれたちをブースから追い出した。 ブースを離れたおれたちは、会場ナビを確認して、店舗の案内をふたりで見ながら飲食店ブースを目指した。 「スペインバルがあるんだな。……ススキノのあそこだろ?」 店舗情報を目にして、知った店に気付く。 「ああ……毎年出店してる」 「美味いんだよな、あそこのパスタ」 「……つか御堂、そんなとこ行くの?」 「夕方から開店するだろう?部活帰りとか」 「行くかよ。……オンナとだろ」 諏訪は珍しくツッコミを噛ましてくる。 しかも無表情。 仮にも彼氏であるおれに対して、その態度はないだろう? もしかして。 諏訪くん、機嫌悪い? まずい。 非常にまずい。 やっぱり、先輩との関係を疑われているんじゃないだろうか……。 早く何とかご機嫌を直してもらわないと、何故だか不吉な予感がする。 おれは嫌な汗をかいていた。 「そこ、ゲート前だから遠いし……」 「ああ」 「バルは札幌に帰ってから行こう。オープンカフェっぽくておれも好き」 ああ………そうですか。 誰と行ったんですか? 聞けないな。 逆鱗に触れそうだ。 「じゃあ、折角だから地元の店に行こうか?」 「うん……近くに地元のカフェの出店があるから、そこにしよう」 いつもの会話のはずが。 妙によそよそしく感じているのは、おれだけだと思いたい。 諏訪。 おれにとってこの世で一番恐ろしいのは、おまえの嫉妬だ。 [次へ#] [戻る] |