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RISING SUN
軽音部3



バンドは入れ替わり、ライブは延々と続く。

一旦順調に流れ出してから、店長とシゲさんはおれたちに任せて休憩に入った。

最近ずっと札幌と会場を何度も往復していたから、疲れているんだろう。
少しでも休憩を取らないと、三日に渡るこのイベントは乗りきれない。

だから、おれの仕上がり具合を確認してから、いけると判断してふたりで休みに入ったんだと思える。

そんな信頼が、嬉しい。

諏訪は淡々といつも通りに監視している。
余程のアクシデントがない限りは、このままのペースでやっていける。

しかしおれは。
諏訪の淡々とした在り方がかえって怖かった。



バンドが交代する度に、ステージの機材の配置が変わる。
そこに集中して、あの3人が活躍しているわけだが。

PAブースの前に軽音部員がたまっていて。
客席からステージを見る部員の表情は、本当に奴等を尊敬しているというか。
好きなんだな……と思えた。

まるで、ファンがアーティストを見つめる視線で。

普段の在り方は、また別なんだろうけど。
多分、部員たちにとっては、連中は既にスターなんだろう。



あんな発情期のオスの集団が人気だなんて。

世の中どうかしている。



だけど、音楽の事を知れば知るほど。
あいつらの凄さを実感する。

ミキシングを担当すると、余計に打ちのめされるおれがいて。
諏訪に対するライバル意識が湧いてくる。



焦るな。
これからだ。



そう自分に言い聞かせて、おれはおれの道を行く。



人生の選択肢は、多い方がいい。

おれは最近そんな風に考えて、今日も自分の首を絞めるような生き方をしている。



定期試験を控えていて。
こんな祭りに参加している場合じゃないんだよな。



だけど仕方がない。

今のこの時間は。
……今しかないから。



それよりもおれは。

やはり諏訪の静けさが怖かった。

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