RISING SUN
軽音部2
「先輩 」
「ち〜っす!」
裏から軽音部員が団体で現れて、店長とシゲさん、そして、同じブースに入っている照明スタッフにも挨拶をする。
すでに演奏中なので、静かに現れた。
そういう行儀の良さは大したものだ。
部員全体が、諏訪のグループと店長を崇拝しているのが明らかで、この強制されたわけではない秩序は見事だ。
「上手くテント張れたか?」
ヒロノブが意味深に男子部員に訊ねる。
「女子が以外と上手くて。たわみなく張り詰めてます」
くっくっくっ…………。
と、ふたりは喉奥で笑いを押し殺す。
何にせよ、すぐに下ネタに走るヒロノブにはもう何も言うまい。
ちゃんと機転を利かせて返す男子部員も大したものだ。
おれにはまだあんな返しは出来ない。
「ラストだ……行くぞ」
「了解」
トモアキ、ヒロノブ、カズノリの3人が、互いに声を掛け合って舞台裏に向かった。
下らない話しに興じていても音はちゃんと聴いていて、ベストのタイミングで持ち場に戻る。
コイツらのライブでの働きは見事だ。
息の合った仕事ぶりはプロ並で。
アイコンタクトだけで仕事を分担してやりあげる。
バンド……というか。
ユニットを組むと言うことはこういう事なんだろうな。
あうんの呼吸って言うのか。
相手がどう動きたいか。
自分は何を期待されているかを察する力がある。
それが、メンバー同士限定の能力だとしても、そんな事が可能な相手なんてそうそう出会えるもんじゃない。
だからコイツらの音楽は凄いんだ。
諏訪は黙って連中を見送る。
その顔には、安心と信頼の表情があった。
このバンドは絶対ビッグになってのし上がる。
おれはこの間の関わりで、確信に近い予感を抱いていた。
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